叫びと祈り

hinakichi
2021年12月26日

 最近本を読むと言ったら事件物ルポかどんでん返しものなのであるが、このところどんでん返しマヒを起こしていて、ラストを読んでも「えっこれってどんでん返し?」とピンとこないものや、こねくり回し過ぎて何が何だかわからないものが続いていた。そんな私が久々に出会った一冊。「叫びと祈り」(梓崎優/著)これには唸った。『砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人事件…中略…一人の青年が世界各国で遭遇する数々の異様な謎(文庫本裏表紙紹介文より)』が繰り広げられる。書店で平積みされていたのだが、もう10年以上も前に単行本で出版されていたものだ。種明かしされても尚、そこから余韻が続く。殺人が起こるミステリーでありながら絵空事ではない生々しさを感じるのだ。感性が豊であられるのも然ることながら、前提として世界中の物事やら仕組みやらを知らなければ面白い作品は描けないのだな。(*今読み返して、よく考えたらどんでん返しモノというくくりにするのもどうかと思った)

 ところで、私の購入した文庫本は乱丁本だった。現代の日本の技術からすればむしろ珍しいと感じ、なんとなく当たりくじを引いた気分である。