エゾハルゼミ

hinakichi
2021年7月19日

 子どもの頃、虫がなぜだか本当に怖くて、特に翅をもった飛ぶ虫が苦手だった。飛び掛かってくるところを想像してビクビクした。大学時代、ある日アパートに帰ると、ドアの前にセミが止まっていて、どうしてもドアを開けて中に入ることが出来ず、近所の友人に来てもらって捕まえてもらった。友人は両手で守るようにしてセミを捕まえて、私とは全然違った態度に驚いた。

 時を経て、2013年。ゴマシジミ研究部のメンバーから冊子の制作をご依頼いただいた。1年がかりで、月一のミーティングを行った。そして、夏のある時合宿があった。その時、研究部のメンバーがエゾハルゼミを捕まえてきて、私に見せてくれたのだ。大学時代のあの日を思い出し、一瞬構えたのだが、ミーティングで昆虫の勉強を続けていった成果もあってか、自然に指でつかむことが出来たのだ。道民だった私は関東の大学に行って初めてゴキブリという虫を目の当たりにし、それなりの格闘を経験し、ゴキブリ以外の虫はだいたい大丈夫になっていったとは思っていたのだが、これには自分でも新鮮な驚きがあった。頭を指で「よし、よし」となでてあげると、そのタイミングで「ぴこ、ぴこ」と脚を上下させるセミに、胸がキュンとなった。まるで家で飼っているコザクラインコのさくらちゃんを可愛いと思うのと同じ種類の可愛さではないか!

 実は一時期、この先どうやって生きていけば良いだろうかと考えながら、何も食べるものが無くなったらその時は木の実、野草と、昆虫を食べよう!と考えていた。昆虫は次世代の高栄養食と考えられているらしいのだ。だから、その合宿の時もメンバーはから揚げにして食べてみましょう!ってことで私に捕まえてくれたのだが、可愛いと思ってしまったがために食べる事は出来ず逃がしてしまった。

 でも、今思うのは、嫌いな昆虫を食べるからキツイのであって、可愛いと思えて初めて食べる事が出来るのではないかという事だ。来るべき時代に備えて、今度こそ感謝をしながらセミのから揚げにチャレンジしてみようか。