山に暮らす雑談

hinakichi
2023年3月15日

 働かせて貰っている農家さんで、近頃は接木作業を行なっている。細かい作業は老眼鏡が必要となってしまったが、好きな作業だ。作業中時折り会話を楽しむのだが、それがまたいつも興味深い。最近教わった生き物の話がいくつかあって、その中の一つ、熊の話を。

 北海道では、住宅街に熊が出没するのはよくある事だ。実家の側にも、現在の自宅の町内も、農家さんの周辺にも、何年も間隔は空くが、熊が出たとニュースになる事がしばしばある。昔は鈴を鳴らして歩けば熊は遭遇する前に身を隠すと言われていたが、現在では鈴を鳴らすと逆に寄ってくるらしい。人間が怖くないことが分かって来たのだろう。

 人間が襲われた時、まず怪我の部分から襲って来た熊の遺伝子を解析するのだそうだ。そして、山に逃げたその熊を探し出し遺伝子を照合して特定し、殺処分する。それは、人間が美味しいと気付いた熊が、人間を襲う為に山から下りて来るのを阻止する為なのである。こ、怖いな〜。動物が冬眠をするのは餌が無いからで、餌があるとなると、冬眠はしないらしい。人間美味しいぞとなったら、年がら年中、熊が町を彷徨くことになる。すぐ数メートル先で遭遇したという話を時々聞くので、心積りをして、対策を練っておく必要がある。

 私の祖父が仲間数人とクマに遭遇した時の話。目の前に大きいクマが立ちはだかり、絶体絶命! 仲間数人で一つの塊となり、一斉にクマを睨みつける。どちらも動かない。ややしばらくして熊が動こうとした瞬間に皆で一斉にワー!!と叫び声をあげ威嚇する。視線は絶対に外さない。熊は動きを止めこちらを観察、またややしばらくの間の熊との微動だにしないにらみ合い。これを何度か繰り返していると、何度か目に、突然熊は体を翻して山へ猛スピードで逃げていったという。

 子供の頃この話を聞いた私は、睨む姿勢とワ~と叫ぶの繰り返しを、来るべき日に備えて訓練をするのであった。皆様も備えあれ。