生命の神秘2

hinakichi
2021年12月10日

 30代半ば頃の出来事である。ある日を境に、原因不明の湿疹が突如顔面に現れた。部分的に発症を繰り返し顔面全体を一巡して、最後に口の周りに出だしてからはその場に停滞し、なかなか収まらない。皮膚科ではおそらく接触性皮膚炎だろうと診断されたが、具体的に何が悪かったかはわからずじまい。赤くぼこぼこに腫れあがる肌に朝晩と薬を塗る日々。薬を塗っている間は収まっているのだが、顔はテカテカ。1か月位たってそろそろどうかと薬をやめるとあっという間に復活するという繰り返しである。

 治療が一年にも及んでいた、そんなある日。夜、大変ショッキングな事が起こり(今振り返ると馬鹿馬鹿しい内容だがこのさい割愛)非常に動揺してしまう。次の日はバイトが厳しい内容となっており、眠れないで現場に向かうなどという恐ろしいことなど絶対に避けたかった。とにかく忘れて寝てしまわなくてはと焦る。焦るゆえにいよいよ眠れない。そこで思い出した。さらに遡ること7年前、内科のついでに不眠症を訴えて軽い気持ちで睡眠薬を処方してもらった事があるのだが、結局ろくに飲まず放置していたことを思い出したのだ。一瞬こんな古い薬飲んで大丈夫だろうかと不安になったが、勢いで飲み込んだ。布団にもぐって目を瞑っているうちに、何故だか心臓の鼓動が早くなってきてバクバク大きく鳴り出した。えっやっぱりまずかったのか!?と不安に駆られる。そうしているうちに体がガクガクブルブル震えてきた。これはヤバいと思って起き上がり薬を薄めなければと水をがぶがぶ飲んでみた。とにかく布団に潜り込み震えながら耐えているうちに、いつの間にか眠りについたようだ。

 朝目が醒めて、安堵した。何事もなく朝を迎えられた。。古い薬って怖いな!!笑。 自分のばかさ加減にほとほとうんざりしてしまった私は、朝、顔の湿疹に薬を塗らなくてはいけないところを、なんとなくどうにでもなれという気分でパスしてしまった。そして夜、とくに変化の無い患部を見ながら、やはり放置。次の日の朝。さすがにまた再発しているだろうと思っていたが、とくに悪化はしていない。その日以来、いつもならまた赤くジメジメとしたデコボコがめだってくるところが、むしろだんだんかさかさと乾燥してきたのだ。今までにない変化だった。そして薬を塗らずにおよそ1週間~10日程経った頃か。完全に乾燥して瘡蓋状になった湿疹がボロボロと剥がれ落ち、下からきれいな肌が現れたのだ。およそ一年間に及ぶ治療が唐突に終わりを迎えたのである。

 どういう仕組みで湿疹は治ってしまったのだろうか。例えば今まで患部(や体のあちこち)で停滞していた毒物が、早い鼓動と体の震えにより血の巡りが良くなり排出されたのだろうか。若しくは細胞が活性化されたのか。あるいは毒をもって毒を制せよとでもいうのか、ホメオパシー的効果だろうか。いずれにしても、途方に暮れていた顔面の湿疹の完治。私に常識があったらむしろたどり着けない境地ではなかったかと今は思う。