「小さな旅」
2002年 A5 カラーインク
1
ある時
みえっぱりのイタチが かたつむりに言いました。
「きみっていつも
僕の立派な家の軒下に いすわっているけれども、
きみには、立派な家ってものが ないのかい?」
6
ほら穴には すてきな窓も もえぎ色のカーテンも
ありませんでした。
「ここはどうやら ぼくの家じゃないな。」
8
海にたどりつくために、川にそって歩くことにしました。
かたつむりは、川の魚たちに聞きました。
「きみたちには 家はあるの?」
「この広い川のすみずみまで ぼくたちの家だよ。
そして、川中の生き物は皆 家族なんだ。」
けれども、かたつむりの家では ありません。
10
さらに歩くと 青くすんだ海が みえてきました。
「海だ!」
ーいいえ、よくみると
青い壁をしたレストランでした。
中からコックが にこにこしながら出てきました。
「ようこそ、いらっしゃい。」
「ぼく、自分の家を探しているんだ。」
「それでしたら、ここにまちがいありません。
さあ、さあ、中へどうぞ。」